信託監督人等事後支援の必要性
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受益者代理人、信託監督人、受託者アドバイザー
ここまでの内容で、信託契約後に事後の支援が必要な主な理由をご説明致しました。ここからは、信託監督人、受益者代理人、受託者アドバイザーの3種の形について、それぞれご説明していきます。
受益者代理人
受益者代理人とは、その名の通り、受益者を代理する者です。代理する受益者の権利に関する一切(信託42条の規定による責任の免除に係るものを除く)の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます。ここでいう受益者の権利には、受託者の監督に係る権利と、信託に関する意思決定に係る権利との双方が含まれます。受託者の監督に係る権利とは、信託法92条各号のものであり、信託に係る意思決定に係る権利とは、受託者の辞任(信託法57条第1項)や解任同意(信託法58条第1項、新受託者の選任同意(信託法62条第1項)等、信託法上の規定だけでも多岐に渡ります。また、信託契約の中で定めた受益権行使についても代理することとなり、例えば、受益権の内容として、定期金銭給付がある場合に、この給付がされなければ、受託者に請求すること、随時給付の定めがあれば、必要に応じて請求することが挙げられます。
なお、受益者代理人が就いた場合には、受益者のその地位に基づく権限は、別段の定めのない限り、そのほとんどが制限されます。
信託監督人
信託監督人とは、信託法に基づく地位であり、受託者が適切に業務を行っているかを監督する立場で、後見制度における裁判所(後見監督人)のようなイメージです。信託監督人の権限は、信託法92条各号(17号、18号、21号、23号除く)に定める権利に関する一切の裁判上及び裁判外の行為ですが、信託契約の中で、別段の定めを設けることが出来ます。ただ、この別段の定めというものに対しての解釈が分かれており、例えば、先に説明した信託に係る意思決定に係る権利の一部でも、付加することが出来るか否かについては答えがない状態です。
受託者アドバイザー
家族信託の運用に当たり、受託者が適正な運用を出来るように、助言をし、また相談相手となる形です。信託法上の地位ではなく、任意サービスとして提供されているものであるため、名称や内容は提供者により異なりますが、受益者代理人及び信託監督人と異なる点として共通するのは、信託法上の地位がないため、家族信託の運用を適正に保つための強制力・拘束力がないこと、受益者を保護するための立場にないことが挙げられます。