家族信託のメリットをわかりやすく簡単に解説!
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問題は建替え時点における判断能力
建替えには、立ち退きや解体といったまだ準備段階から、建築竣工に担保設定登記に至るまで、異なる時期の全てにおいて判断能力を有している必要があり、つまりは、判断能力の減退リスクが問題となる。
課題の解決
⇒ 任意後見では建替え対応は困難であることから、家族信託を利用する。
自宅を売却して介護他生活原資を確保するケース
事案概要
当事者)
母 77歳、長男 51歳 二男 48歳、三男 46歳
保有財産)
都内の自宅不動産と預金約2,000万。
築47年木造で老朽化が進んでいる。更地売却査定価格としては、約8,000万円。
収支状況)
収入 年間約85万円の年金収入。
支出 年間約180万円ほど。
差引 年間95万円ほどの預金切り崩し生活。
居住関係等
母と三男が母自宅に同居。長男、二男はそれぞれ別個に自身の自宅を所有。子供はいずれも働いていて自立している。
検討事項
・母の収支が、年間95万円の赤字。
・平均余命は、約15年。(厚生労働省_令和4年主な年齢の平均余命表より)
⇒ 生活収支を生涯固定して考えるとすれば、2,000万-(95万×15年)=575万円の余力があることになる。
・老朽化が進んだ自宅の維持修繕費やイレギュラーな医療費、平均余命を越えて生きること等を踏まえる必要がある。
・自立生活が困難となり、介護施設に入った場合、介護付き有料老人ホームの施設費用相場は、年間384万円(LIFULLホームズ東京都の老人ホーム費用相場より_入居時費用0円の場合)。
・介護付き有料老人ホームでの生活となった場合には、上記の施設費用以外に、介護サービスや医療、消耗品費等は別途必要となる。
⇒ 平均余命15年のうち、最期の5年間のみ、介護付き有料老人ホームでの生活となったと仮定し、施設外費用実費が、年間50万円であったと仮定して計算をすると、次の通りとなる。
計算式)
平均余命までの支出= 10年×現状生活支出+5年×介護付き有料老人ホーム生活費
⇒ 10×180万+5×(384万+50万)=3,970万
平均余命までの収入= 15年×年間年金収入
⇒ 15×85万=1,275万円
必要金融資産= 平均余命までの収入-平均余命までの支出
⇒ 3,970万-1,275万=2,695万
不足金=必要金融資産-保有金融資産
⇒ 2,695万-2,000万=695万
以上。
つまり、この仮定における計算では、695万円が不足することとなります。
なお、実際には、老朽化が進んだ自宅の維持修繕費やイレギュラーな医療費、平均余命を越えて生きること等を踏まえる必要があるため、より多くの金融資産が不足すると考えた方がよいでしょう。
対応方法
対応としては、①生活支出を抑える、②介護付き有料老人ホームのグレードを下げる、③介護付き有料老人ホームに入らない、④金融資産を増やす といったことが考えられますが、③は可能な限り自宅生活で頑張る程度に考えなければならないでしょう。家族への過大な負担を掛けることとなりますし、自身の生活の安全性にも関わるためです。
④は、余剰資産で行うわけではない以上、リスクを伴う投資は避けるべきで、やるとすれば国債のような債券投資が考えられますが、元手の問題もあり、焼け石に水となるでしょう。
①と②が現実的な対応として考えられますが、ここで忘れてはいけないのが、自宅の所有があるということです。自宅の売却査定価格は8,000万円ですから、譲渡所得税と翌年の住民税等の加算を踏まえても、不動産売却価格を含めて考えれば、十分に余裕があります。
不動産を含めずにライフプランを考えると、苦しいシミュレーションとなりますが、不動産を含めて計算すれば、安心して暮らしていけることが分かります。このケースでは、特段生活を切り詰める必要はなく、介護付き有料老人ホームのグレードを相場よりも特段落とす必要はないこととなり、これまでと変わらない若しくはもう少し余裕をもった生活も可能でしょう。
つまり、対応方法としては、不動産を生活原資に転換するということです。