家族信託のメリットをわかりやすく簡単に解説!
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将来、介護施設に入ったら、自宅を建て替えるケース
事案概要
当事者)
母 78歳、長男 50歳 長男妻 52歳
保有財産)
都内の自宅不動産、預金3,500万。自宅不動産は築48年木造で老朽化が進んでおり、大きな地震や台風が危惧される。自宅不動産は好立地で賃貸化における条件は良い。
収支状況)
年間約240万円の年金収入、年金内での生活で収支はプラスマイナスがほぼ0円
相続関係)
母の相続人は、長男のみ。
居住関係)
長男は、妻とともに自己所有の自宅に住んでおり、母は独居。
本人の意向)
母は、まだ自宅に住んでいたいものの、自身の健康状態や建物の状態を踏まえ、近々ではないものの、介護施設での生活も検討している。
検討事項
1.介護施設に転居した後の自宅をどうするか。
・長男が住まう予定はない。
・老朽化した建物を放置するのはリスクが大きい。
・更地にすれば固定資産税が高くなる。
・売却すれば、多額の金銭に換価されることとなり、相続税が過大になる。
・長男は自己所有居住不動産を持ち、転居予定もないことから、居住用不動産としての小規模宅地特例は使えない。
⇒ 運用の方向で検討。
・リフォームして賃貸するには、建物の状態から簡易なものでは済まず、高くつい
てしまう。
⇒ 建替えにより運用する。
2.判断能力の問題
母が介護施設に転居した後に建て替えを行うとして、その時点における判断能力が問題となる。認知症や事故・病気等により判断能力が減退していれば、建替えの実行が出来ない可能性がある。
⇒ 家族信託又は後見制度による対応
3.家族信託の利用
本人は預金が十分にあり、年金収入も多い。建て替えは本人の生活維持において必須
とは言えず、かつ、リスクを伴うactionであることから、後見制度では、建替えは出来ない。
⇒ 家族信託の利用。
4.家族信託による効果
・将来、介護施設に転居した後の建替えが可能になる。
・建替えにより、空家として放置した場合には、管理コストが出るだけであった不動産が、収益を生むようになる。
・賃貸物件とすることで、貸家建付地としての評価減と賃貸事業用地としての小規模宅地の利用が可能になる。
・介護施設に入った後の費用全てを、年金と賃料で賄えるようになる。
・建築費と建物評価額の差額分、相続税の対策となる。
老朽化した賃貸アパートの建替えケース
事案概要
当事者)
父 80歳、長女 52歳 長女夫 53歳
保有財産)
都内の賃貸不動産、預金2,200万。
賃貸不動産は築51年木造で老朽化が進んでおり、使えないわけではないものの、賃貸物件としての競争力低下、設備や構造体の劣化、大きな地震等による倒壊の問題と不安がある。なお、賃貸物件としては、好立地で、運用条件は良い。
収支状況)
収入
年間約180万円の年金収入と満室時賃料約440万円
支出
年間収支はプラス100万程度。(長女夫妻と同居の二世帯住宅の固定資産税と光熱費全額を負担し、毎年100万程度を長女に渡している。)
相続関係)
父の相続人は長女のみ。
居住関係)
父、長女、長女夫は、長女夫妻名義の二世帯住宅に居住。
検討事項
1.父の生活保障の問題
・賃料収入に依存している。賃料収入の大幅な低下ないし喪失は生活を圧迫する。
・推定売却価格は、更地売却で8,000~9,000万。
⇒ 賃貸収入が滞っても、売却してしまえば、生活資金の問題は全くない。
2.相続税
現状ママでも、相続税支払いは生じるが、それほど大きな金額にはならない。ただ、不動産を売却すると、支払い額は大きく増える。
⇒ 賃貸不動産のままでの相続承継が有利。
3.不動産活用と長女のライフプラン
・大田区内の好立地の物件で、賃貸需要は十分にあり、長期的な運用が見込める。
・大手ハウスメーカーによれば、概ね9,000万円の建替え費用で、年間750万程度の収入の見込み。
・長女は労働収入の収入はなく、一般的なサラリーマン。
⇒ 長女の代も踏まえて考えるならば、売却よりも運用に経済合理性がある。
結論)
・父の代で建て替えを行う。
⇒ ・父の賃料収入を安定化し、不測の事態を回避。(手残りはやや落ちるが。)
・相続税を基礎控除内に抑えることができ、支払いが生じなくなる。
・長女の生活の安定